ストップの手法
今週はテーマを変えて「ストップの手法」という話です。ストップの手法のうち最も重要なのは証拠金に対する損失額で、これを守らないといくらストップの手法を考えても意味がありません。
1回の取引で証拠金に対して3%の損失額(最大5%未満)を最大損失額とするとすれば、100万円の証拠金残高がある場合、ストップの水準は3万円ということになります。ここでは、3万円という金額のみを前提としていますので、ドル円で取引する枚数が10万ドルであれば30銭となりますし、1万ドルであれば3円です。
取引スタイルに応じて、これから書くようなストップの手法で示される水準にすぐに引っかからない水準となる取引枚数であるべきです。つまり、「ストップの手法による損失額」が「証拠金に対する損失額」よりも少ない状態でないと、手法に関係なく仕切らなくてはなりませんので意味がありません。
古典的なストップの手法
古典的なストップ、かつ結構有効な考え方として「nバーストップ」があります。これは直近n本のバーの最高値・最安値を抜けた時に仕切るというものです。3バーストップで買いポジションを持っているのであれば、現在の更新中の足を含めないで直近3本の安値を下回ったならば仕切るということになります。
この場合、ザラバ(更新中の足の安値が到達した段階)で仕切る考え方と、終値(最終の足が確定し、次の始値が到達した段階)との2つの考え方がありますが、ザラバよりも終値が確定した段階で仕切る手法が一般的と言えます。しかし、その場合でもザラバの安値から終値確定までに大きく動くこともあり得ますので、そうした時には冒頭で書いた「証拠金に対する損失額」を併用し、同水準に到達したら仕切らなくてはなりません。
2つ例をご覧ください。どちらも112.50で10万ドルのドル買いポジションを持っているケースです。冒頭の例をそのまま使い112.20が証拠金に対する最大損失額とします。
(1) 計算によるストップが112.30で最後の足の安値が112.25、終値(=次の足の始値)が
112.28 →この場合は、計算によるストップである112.30を終値で下回ったので次の
足の始値112.28で仕切ります。
(2) 計算によるストップが112.30で最後の足の安値が112.18、終値(=次の足の始値)が
112.28 →この場合は、計算によるストップ112.30だけでなく、証拠金に対する最大
損失額となる112.20を下回った段階で仕切ります。
ここまでのテーマのイメージはおわかりいただけたかと思います。
ストップの手法
さて、本日のテーマである計算による「ストップの手法」です。計算によるということは、テクニカル指標によるストップの水準を用いるということです。
MT4標準のテクニカル指標からいくつか例をあげると、移動平均線を抜けたら、移動平均線がクロスしたら、といった移動平均線を使う手法や、そもそもストップの水準を示すための手法であるパラボリック(Parabolic SAR)もあります。ここではストップの水準を示すパラボリックについて若干の補足をしておくと、同手法はかのワイルダー氏が開発した一連のテクニカル指標のひとつで、加速係数というやや難しい考え方を取り入れたものです。
ここでは式ではなく、ビットコイン円の日足チャートにパラボリックを表示したものをご覧ください。
青がデフォルトの加速係数0.02(最大0.2)、ピンクがより離れた水準となる加速係数0.01(最大0.1)の例です。加速係数を0.01~0.05程度の間で変化させることでストップの水準とSAR(ドテン)の変化が変わってきますので自身の目で確認してみてください。
シャンデリアストップ
ワイルダー氏は恐ろしく多くのテクニカル指標を開発していますが、ストップの手法も複数開発しています。今回は同氏が開発したストップの手法から「シャンデリアストップ」またの名をボラティリティストップを紹介しましょう。
シャンデリアストップは、パラボリックよりもはるかにシンプルで、かつ中長期のポジション保有に有効なストップの手法です。ここでも細かな計算式は省略しますが、ATR(真のレンジの平均、24時間取引の場合はそのままレンジの平均)をEMA(10~20期間)で求め、その3倍(2.5~4倍)を最高値・最安値に加減することで、ストップの水準を求めることが出来ます。
ここではネット上で検索すると出てくる「ChandelierStops_v1」というカスタム指標を用いてみます。パラメータはATRのEMA期間を14期間、ATRの倍数を4.0として、比較的長期間向けの数値としてみました。
9月6日以降はシャンデリアストップが継続的に上側にある、つまりトレンドは下降トレンドであることがわかります。ストップの水準だけでなくトレンドの確認にも使えます。
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