テクニカル指標における平均
前回のテーマはオシレータ系指標における先行表示がテーマでしたが、「先行させる」という考え方はテクニカル指標を設計する際に重要な技法のひとつです。他にも重要な技法は色々とありますが、最もよく使われ各種テクニカル指標の計算過程のどこかで使われていることが多い技法に移動平均があります。
テクニカル指標における平均
移動平均と聞くと、単純移動平均や指数平滑移動平均(EMA)など移動平均の種類やどの価格を適用するのかといった部分に目が行きがちですが、本質は「均す(ならす)」というところにあります。当たり前と言われればそうなのですが、動きが大きい元の数値の平均を取ることで見やすくしているわけです。
ひとつ例をあげるとストキャスティクスの元の数値は%Kですが、敏感な動きをするために%Kの平均を取った%D、さらにその平均を取ったSlow%Dの3つの線から、%Kと%Dを使うものがファースト・ストキャスティクス、%DとSlow%Dを使うものがスロー・ストキャスティクスと呼ばれます。
ストキャスティクス自体にも「一定期間における高値と安値を基準に現在値がどの位置にあるのかを決定する」という重要な技法がありますが、これは別の機会に紹介することにします。今回はストキャスティクスの中に平均とそのまた平均という2回平均するという考え方が含まれているという事実に注目してください。
移動平均の移動平均
ここで5日移動平均を考えてみます。5日間の平均ですと期間が短いため実際の値動きに近い=追従性が良いというメリットと、動きが敏感=ダマシが多いというデメリットが共存します。一般的には期間を長くするという方向に行きますが、上記のSlow%Dのように5日移動平均の平均を取るという考え方もあります。
次のチャートをご覧ください。
5日終値単純移動平均(青)とその3日移動平均(赤)、さらにその3日移動平均(緑)と移動平均の移動平均の移動平均と3回移動平均を求めたチャートです。
5日移動平均の3日平均の3日平均ですから、元データは5期間ですが実際には11期間のデータを用いていることと同じです。そこで11日単純終値移動平均もピンクの点線で表示しました。
見ればわかりますが、元の移動平均はデコボコした曲線ですが、それを均すことで滑らかな曲線とさり、それを更に均すとかなり滑らかな曲線を描いていることがわかります。その時の値動きによって細かな違いは出てきますが、一般的に3回均す加工を行った移動平均は長期で加工しない移動平均に比べて追従性が良くなることが多いと言えます。
これは緑の3回均した移動平均線(5,3,3)とピンクの11期間移動平均線を比較するとわかりやすいですが、移動平均線がワークしやすいトレンド相場において、前者の方がローソク足に近いところに位置するため、よりローソク足と移動平均線との位置関係で上下の方向性を判断しやすいと言えるでしょう。
TRIX
こうした3回の移動平均を利用したテクニカル指標にTRIXがあります。TRIXは上記の考え方を応用したものですが、移動平均の移動平均の移動平均を求め、その値を前日の値と比較することでオシレータ系指標にしたものと言えます。
MT4のテクニカル指標でTRIXを検索すると、そのTRIXのさらに移動平均(4回目)を求めそれをシグナルラインとして表示したものがヒットすると思います。ちょうどMACDにおけるMACDとシグナルとの関係のようなものです。
実際にTRIXの指標を出してみましょう。
見た感じMACDにそっくりですが、赤いラインがTRIX(ここでは5期間を3回均している)、青いラインがその3期間平均を取ったシグナル、また2つのラインの差をヒストグラムとして表示しています。TRIXとシグナルとがクロスする(=ヒストグラムが0ラインをクロスする)位置に売買の矢印まで付加されていて随分と親切な作りです。
このTRIXに限らずですが、MT4ではPrevious Indicator’s Dataを適用価格とすることで何度でも移動平均を繰り返すことが可能です。皆さんがお気に入りの指標をこのように複数回均すことで、別の視点でそのテクニカル指標を見ることが出来るかもしれませんね。
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